タリバンを支えるパキスタン

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ブルカを着るカブールの女性たち。1997年撮影

 タリバンのザビフラ・ムジャヒドゥ報道官が25日、カブールの情報文化省でニューヨークタイムズ記者との単独インタビューに応じ、タリバンに反対してきた人たちへの報復や、20年前の政権が女性に強いた施策を復活させる考えはないと明らかにした(https://www.nytimes.com/news-event/taliban-afghanistan)。女性は顔を隠すべきで、外出の際は親族など婚姻不可能な男性保護者「マフラム」の付き添いを必要とするという考えに根拠はないと述べた。また、女性が学校や職場に通うことも問題視しない考えだ。しかし、タリバン兵たちの女性に関する認識を正す必要があるので、安全のため、女性はしばらく自宅で待機することを勧めている。ただ、音楽はイスラムの教えに反するとして禁止し、国民には理解を求めると答えた。ムジャヒドゥ報道官は新政権で情報文化相に就任する見込みで、批判の的となる人権問題で柔軟姿勢をアピールしていくものとみられる。

 一方でタリバーンは、国防相にアブドゥル・カイーム・ザキールを任命している。ザキールはアルカイーダと密接な関係があった「ハッカーニ・ネットワーク」と連携して米軍と戦い、2010年に捕虜となりグアンタナモ収容キャンプに収監された。ところが、パキスタンの軍特務機関ISIと関係が深かったことから、後に釈放され、その後も公然とテロ活動を続けてきた人物だ。米軍に指名手配されるハッカーニ・ネットワークの幹部、カリル・ハッカーニも堂々とカブール入りしており、タリバンの姿勢には疑念がつきまとう。

 地政学的にアフガニスタンを常に影響下におきたいパキスタンは、米国の「テロとの戦い」の最大の功労者でありながら、米軍の交戦相手であるタリバンを支援し続けるダブルスタンダードをとり続けてきた。タリバンのカブール奪還は「アフガン人の顔をしたパキスタンの侵略」とも言われる。だが、アフガニスタンが再びテロの温床となれば、自国のタリバン化という爆弾を抱えることになりかねない。

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前線に向かう前に祈りをささげるタリバン戦闘員。1997年撮影